妊活に亜鉛が注目される理由とは

妊活を始めると「葉酸」に注目しがちですが、もう一つ見逃せない栄養素があります。それが亜鉛です。
亜鉛は体内の300種類以上の酵素に関与し、細胞分裂やホルモン代謝に深くかかわるミネラルです。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、妊娠を計画している方への重要な栄養素として位置づけられています[1]。
しかし、令和元年の国民健康・栄養調査によると、20〜30代女性の亜鉛摂取量の中央値は約7.4mgにとどまり、推奨量に届いていない方が少なくありません。
この記事では、亜鉛が妊活にどう関わるのかを男女両方の視点からエビデンスをもとに解説します。効率的な摂り方やおすすめ食材まで網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。
亜鉛と妊活の関係|そもそも亜鉛とは?

亜鉛は必須ミネラルの一つで、体内では自ら合成できないため食事からの摂取が不可欠です。主な役割を整理します。
- 細胞分裂のサポート:DNAの複製や修復に関わり、新しい細胞をつくるプロセスを支えます
- ホルモン代謝への関与:性ホルモンを含む多くのホルモンの合成・分泌にかかわります
- 抗酸化作用:活性酸素から細胞を守る酵素(SOD)の構成要素として働きます
- 免疫機能の維持:免疫細胞の正常な働きを支えます
これらの働きが、妊活中の男女にとって重要な意味を持ちます。とくに細胞分裂とホルモン代謝は、卵子・精子の発育や受精後のプロセスに密接に関連しています。
妊活中の食事全般について知りたい方は、「妊活中の食事で気をつけたいポイント」も合わせてご覧ください。
【女性編】亜鉛が女性の妊活をサポートする仕組み

亜鉛は女性の生殖機能に多面的にかかわっています。NIH(米国国立衛生研究所)の研究レビューでも、亜鉛が女性の生殖において重要な役割を果たすことが報告されています[2]。
卵子の成熟と排卵
亜鉛は卵母細胞の成熟過程で重要な役割を担っているとされています。研究では、卵子の減数分裂の進行や排卵に亜鉛が必要であることが示唆されています。
亜鉛が不足すると、卵子の成熟が十分に進まない可能性が研究で指摘されています。
ホルモンバランスへの関与
亜鉛は女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の代謝に関与するとされています。これらのホルモンは排卵や子宮内膜の準備に深くかかわるため、亜鉛の十分な摂取がホルモンバランスの維持に寄与する可能性があります。
受精卵の発育
受精後の初期胚の細胞分裂には亜鉛が欠かせません。NIHの研究では、受精後の前着床胚の対称分裂・増殖・分化が亜鉛の利用可能性に依存することが示されています[2]。
葉酸との相乗的な関係
亜鉛は葉酸サイクルの酵素の補因子としても機能します。葉酸は妊活中の女性に推奨される代表的な栄養素ですが、亜鉛が不足すると葉酸の代謝効率にも影響する可能性があります。
葉酸を多く含む食品については「葉酸の多い食品まとめ」で詳しく解説しています。
【男性編】亜鉛が男性の妊活に重要な理由

亜鉛は「セックスミネラル」と呼ばれることもあるほど、男性の生殖機能との関連が深いミネラルです。前立腺や精液中に高濃度で存在し、精子の形成に密接に関与しています。
精子の質と亜鉛の関連性
2016年にScientific Reports誌に掲載されたシステマティックレビュー・メタアナリシスでは、不妊男性の精漿中の亜鉛濃度が正常男性と比べて有意に低いことが報告されています[3]。
また、亜鉛の補給によって以下の指標に好影響がみられたとする報告があります。
- 精液量
- 精子の運動率
- 正常形態精子の割合
ただし、これらの研究には規模や条件にばらつきがあり、すべての男性に同様の結果が期待できるわけではありません。
テストステロンとの関係
亜鉛はテストステロン(男性ホルモン)の合成にも関与しているとされています。テストステロンは精子形成の調節に重要なホルモンであり、亜鉛不足がテストステロン濃度の低下と関連する可能性が複数の研究で示されています[4]。
酸化ストレスからの保護
精子は酸化ストレスに対して脆弱です。亜鉛は抗酸化酵素の構成要素として、精子のDNA損傷を軽減する可能性が研究で報告されています。
男性の妊活サプリメントについてさらに知りたい方は「男性の妊活サプリの選び方」もご参照ください。
1日にどれくらい摂ればいい?推奨量と上限量

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」に基づく推奨量と耐容上限量は以下のとおりです[1]。
| 対象 | 推奨量(1日) | 耐容上限量 |
|---|---|---|
| 成人男性(18〜29歳) | 9.0mg | 40mg |
| 成人男性(30〜64歳) | 9.5mg | 45mg |
| 成人女性(18〜29歳) | 7.5mg | 35mg |
| 成人女性(30〜64歳) | 8.0mg | 35mg |
| 妊婦(付加量) | +2.0mg | 35mg |
| 授乳婦(付加量) | +4.0mg | 35mg |
注意点:耐容上限量を超える長期的な摂取は、銅の吸収阻害や免疫機能の低下を招く可能性があります。サプリメントを利用する場合は、食事からの摂取量も考慮して上限量を超えないよう注意しましょう。
亜鉛を多く含む食品ランキング

亜鉛は日々の食事から摂ることが基本です。含有量の多い食品を一覧で紹介します。
| 食品名 | 亜鉛含有量(100gあたり) | 1食の目安量 | 1食あたりの亜鉛量 |
|---|---|---|---|
| 牡蠣(生) | 14.0mg | 5粒(約60g) | 約8.4mg |
| 豚レバー | 6.9mg | 60g | 約4.1mg |
| 牛肩肉(赤身) | 5.7mg | 100g | 約5.7mg |
| 牛もも肉 | 4.0mg | 100g | 約4.0mg |
| 卵黄 | 4.2mg | 2個分(約34g) | 約1.4mg |
| パルメザンチーズ | 7.3mg | 大さじ1(約6g) | 約0.4mg |
| カシューナッツ | 5.4mg | 10粒(約15g) | 約0.8mg |
| 納豆 | 1.9mg | 1パック(約50g) | 約1.0mg |
ポイント:牡蠣は圧倒的な含有量を誇りますが、毎日食べるのは現実的ではありません。牛肉・卵・納豆など日常的に取り入れやすい食品を組み合わせることが大切です。
亜鉛の吸収率を高める食べ合わせと注意点

亜鉛は腸管からの吸収率が約20〜40%と低めのミネラルです。食べ合わせの工夫で吸収効率に差が出るため、ポイントを押さえておきましょう。
吸収を高める組み合わせ
- ビタミンC:キレート作用により亜鉛の吸収を助けます。牡蠣にレモンを絞る、肉料理にパプリカを添えるのがおすすめです
- クエン酸:胃の中で亜鉛をイオン化しやすくします。梅干し・酢の物・柑橘類と一緒に摂りましょう
- 動物性タンパク質:肉や魚に含まれるアミノ酸が亜鉛の吸収を促進します
吸収を妨げる成分
- フィチン酸:玄米・全粒粉・豆類の外皮に多く含まれ、亜鉛と結合して吸収を阻害します
- 食物繊維の過剰摂取:適量なら問題ありませんが、極端に多いとミネラルの吸収に影響する場合があります
- リン酸塩:加工食品やインスタント食品に多い添加物で、亜鉛の吸収を妨げます
- カフェイン・タンニン:食事直後のコーヒー・紅茶は30分ほど空けると安心です
妊活中の食事計画全体を見直したい方は「妊活中の食事で気をつけたいポイント」が参考になります。また、妊活にビタミンDが必要な理由も参考に、亜鉛と一緒にバランスよく摂取することをおすすめします。
亜鉛を活かした具体的な料理については妊活レシピで亜鉛を効率よく摂取でも紹介しています。
亜鉛サプリメントを検討する際のポイント

食事だけで推奨量を満たすのが難しい場合、サプリメントの活用も選択肢の一つです。選ぶ際のポイントを整理します。
サプリメントの種類と特徴
- グルコン酸亜鉛:一般的なサプリメントに多く使われる形態
- ピコリン酸亜鉛:吸収率が比較的高いとされる形態
- 酵母亜鉛:食品由来の形態で、体への親和性が高いとされます
注意したい3つのこと
- 過剰摂取のリスク:1日の耐容上限量(女性35mg)を超えないようにしましょう。長期的な過剰摂取は銅欠乏症や消化器症状を引き起こす可能性があります
- 他の栄養素とのバランス:亜鉛の過剰摂取は銅や鉄の吸収を阻害します。マルチミネラルタイプでバランスよく摂るのも一つの方法です
- 医師への相談:不妊治療中の方や処方薬を服用中の方は、サプリメントを始める前に主治医に相談してください
妊活サプリメント全般の選び方については「妊活中におすすめのサプリまとめ」をご覧ください。
【男女別】亜鉛を意識した1日の食事例

具体的な献立イメージを男女別にまとめました。
女性の1日の食事例(目標:8.0mg)
| 食事 | メニュー例 | 亜鉛量の目安 |
|---|---|---|
| 朝食 | 納豆ごはん+卵+味噌汁 | 約2.5mg |
| 昼食 | 牛丼(牛肉100g)+サラダ | 約4.5mg |
| 間食 | カシューナッツ10粒 | 約0.8mg |
| 夕食 | 焼き魚+ほうれん草のおひたし+ごはん | 約1.5mg |
| 合計 | 約9.3mg |
男性の1日の食事例(目標:9.5mg)
| 食事 | メニュー例 | 亜鉛量の目安 |
|---|---|---|
| 朝食 | トースト+スクランブルエッグ(2個)+チーズ | 約2.0mg |
| 昼食 | ステーキ定食(牛肉150g)+レモン付き | 約7.0mg |
| 夕食 | 豚レバニラ炒め+ごはん+スープ | 約4.5mg |
| 合計 | 約13.5mg |
意識して肉・魚介類を取り入れれば、サプリメントなしでも推奨量を満たすことは十分に可能です。
妊活中の亜鉛に関するよくある質問

Q. 亜鉛を摂りすぎるとどうなりますか?
A. 亜鉛の過剰摂取が続くと、吐き気・腹痛などの消化器症状が出る場合があります。さらに長期間にわたると銅の吸収が阻害され、銅欠乏性の貧血を起こす可能性も報告されています。サプリメントを利用する場合は、食事からの摂取量と合わせて1日の耐容上限量(女性35mg・男性40〜45mg)を超えないようにしましょう。
Q. 亜鉛と葉酸は一緒に摂って大丈夫ですか?
A. 問題ありません。亜鉛は葉酸サイクルの酵素の補因子として働くため、むしろ一緒に摂ることでお互いの働きを補完する可能性があります。妊活中は葉酸と亜鉛をバランスよく摂取することが推奨されています。
Q. 男性はいつから亜鉛を意識すべきですか?
A. 精子の形成には約74日かかるとされています。そのため、妊活を始める2〜3か月前から亜鉛を含む食事を意識するのが望ましいとされています。
Q. 亜鉛が不足しているかどうか、どうすればわかりますか?
A. 血液検査で血清亜鉛値を測定できます。基準値は一般的に80〜130μg/dLです。妊活のために検査を希望する場合は、婦人科や泌尿器科で相談してみてください。
Q. ベジタリアンでも十分な亜鉛を摂れますか?
A. 植物性食品にも亜鉛は含まれますが、フィチン酸の影響で吸収率が低い傾向があります。大豆製品・ナッツ類・全粒穀物を積極的に摂りつつ、必要に応じてサプリメントの活用を検討してください。ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率の向上が期待できます。
まとめ|亜鉛は妊活中の男女に欠かせない栄養素

亜鉛は、女性の卵子の成熟やホルモンバランス、男性の精子の質やテストステロンの合成など、妊活中の男女にとって多面的に重要なミネラルです。
ポイントを振り返ります。
- 亜鉛は300種類以上の酵素に関与し、細胞分裂やホルモン代謝を支える
- 女性には卵子の成熟・ホルモンバランス・受精卵の発育に関与する可能性がある
- 男性には精子の質・テストステロン合成・酸化ストレス保護への関与が研究で示されている
- 推奨量は男性9.0〜9.5mg/日、女性7.5〜8.0mg/日(妊婦は+2.0mg)
- 牡蠣・牛肉・豚レバー・卵・納豆など身近な食品で摂取できる
- ビタミンC・クエン酸と一緒に摂ると吸収率が向上する
まずは毎日の食事を見直すところから始めてみましょう。食事だけで不足が気になる場合は、医師に相談のうえサプリメントを検討するのも一つの方法です。
自分に合った妊活サプリを探したい方は、亜鉛配合の妊活サプリを探すもどうぞ。
出典
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- Garner TB, Hester JM, Carothers A, Diaz FJ. “Role of zinc in female reproduction.” Biol Reprod. 2021;104(5):976-994. doi:10.1093/biolre/ioab023(PMC8599883)
- Zhao J, Dong X, Hu X, et al. “Zinc levels in seminal plasma and their correlation with male infertility: A systematic review and meta-analysis.” Sci Rep. 2016;6:22386. doi:10.1038/srep22386
- Fallah A, Mohammad-Hasani A, Colagar AH. “Zinc is an Essential Element for Male Fertility.” J Reprod Infertil. 2018;19(2):69-81.(PMC6010824)
※この記事は栄養に関する一般的な情報提供を目的としています。特定の疾患の診断・治療を目的としたものではありません。妊活や不妊治療については、必ず医師にご相談ください。
※記事の内容は公開時点のエビデンスに基づいています。最新の研究により見解が変わる場合があります。
※この記事で紹介するサプリメントは食品であり、医薬品ではありません。疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。体調に不安がある方は医師にご相談ください。
